「去年の宴は楽しかったけど、今年は最悪!!」
「幸姫、宴はまだ明日でござるよ」


やってもいないと申すのに、何を申すか。

すっかり不貞腐れた幸姫の為に、明日の着物を用意する。


「この着物は如何でござりまする」
「晁子より可愛いのがいい!」
「そんなことを拙者に申されても困りまする!」


晁子殿の着物等、拙者は知りませぬ!

第一、何をそんなに張り合うのかが解せぬのだ。



「幸姫、そんなに申すならご自分でお選び下され」

「霧助が選んでくれないと意味がないの!」

「はぁ?何の意味でござりまする」

「霧助が選んだ着物で晁子を見返すのよ!」

「まだあの日のことを根に持っていたのでござるか!?」



案外ひつこい方でござるな!

拙者が選ぼうとも幸姫が選ぼうとも、大差ないように思いまする。



「拙者は別に気にしておりませぬ故、張り合うのはもうお止め下され」

「ダメ!絶対晁子に謝らせてやるの!」

「そもそも、晁子殿も別に悪口を言った訳ではないと思いまするが…」

「…霧助は、晁子の味方なの?」

「は?拙者は別に…」
「もういい!霧助のバカ!」

「あっ、幸姫!!」



幸姫は拙者の手を振り払い、部屋から飛び出した。

何をそんなに怒っておるのだ、拙者は別に晁子殿の味方という訳ではないと申すのに…。


拙者は一人首を捻り、悶々と考え込んだ。