今日は屋敷の大掃除。
朝から女人は忙しなく働き屋敷の至るところを掃除している。

拙者も手伝えるものなら手伝いたいのだが…。


「霧助!ほら見て、桶お化け~」
「幸姫、その桶を今すぐ元あった所へ返して参られよ」


掃除用の桶を被り、無邪気に遊ぶ幸姫。
そう、拙者はこのお転婆姫の掃除するところを監視せねばならぬ。


「掃除なんてつまんない、遊ぼうよ霧助♪」
「幸姫がお戯れられた所は、決まって拙者が後始末せねばなりませぬ故、賛同致しかねる」
「ケチ!!」
「ケチとかどうこう言われる筋合いはありませぬ!さぁ、幸姫も日頃汚された所を掃除してくだされ」


渋々廊下を掃く幸姫。

貴女が汚した場所は、そんな所ではないでござろう。
一体誰が苦労して後始末していると思ってるでござるか。

思うところはあっても、拙者も黙って監視に集中。
目を離したら、あっという間に消えてしまう。


「…霧助、霧助は掃除しないの?」
「ぬ?拙者は政幸殿に幸姫の監視を命じられておりまする」
「えーっ!!兄上のバカ~!」

「誰がバカだ」
「あ、兄上~!元気?」
「罵倒を浴びせた本人を前にその態度とは…」


やはりこの姫、侮れぬ。

政幸殿は叩きを片手に幸姫と対談。
何と申しても、やはり仲のよい兄妹だ。


「さぁ、掃除にお戻り下され、お二人共」
「もう、小姑みたいに言わなくてもわかってるよ!」
「一言余計でござるよ、幸姫」
「ごめんなさい」
「うぬ」
「万能クナイだな、霧助」


掃除の時位、拙者に余計な仕事を与えないで下され。

監視だけでも、神経使ってるのでござるよ。
特にこのお転婆姫には。


――――キャーーーッ!!


「…!!何事でござる!?」
「あ、そういえば物置に私の秘蔵人形三十体置いてる事伝えるの忘れてた…」
「悪趣味な事をしないで下されッ!!」
「いつの間にそんな数の人形を…」


また、仕事が増えてしまった…。