拙者は月が好きでござる。

明るくて、いつも違った顔を魅せる月が。


月と拙者は、切っても切れぬ関係と言っても過言ではござらぬ。


この屋敷で、一体どれだけの月を見てきただろうか。


拙者ももう、長い間この屋敷に仕えた。
色々な出来事を、あの月は見ておった。


拙者が忍として生まれ、この神代に仕え、そして骨となり朽ちようとも、お前は変わらず夜空に昇るのだろうな。


もしも、拙者が身を亡ぼそうとも…どうかお前だけは、この神代を見守ってくれ。

拙者が忍である限り、平和は訪れぬ。



「…きりすけぇ?」

「…!! …幸姫…」



目を擦りながら現れた幸姫が、拙者を見ていた。

拙者は苦笑して、幸姫の元に向かう。



「申し訳ござりませぬ、起こしてしまったでござるか?」

「ううん、大丈夫…」



未だに寝惚けている幸姫を部屋の中へ誘導し、布団に寝かせた。

すぐに寝付いてしまわれた幸姫をあやしながら、拙者は横になる。




早く、寝なければな…明日も早い。


拙者は目を閉じて、ようやく眠りについた。