真夜中…拙者はあれから取り押さえられ、致し方無く布団に入っている。

隣には幸姫がいる、それだけで何故か心が乱れた。

妙に落ち着かない、眠れぬ。


「うー…うぅー……」
「…幸姫…?」


背後から聞こえた幸姫の呻き声が気になり、拙者はごそりと寝返った。

思ったより近かった寝顔に、思わず胸が跳ねた。


「…う、ん……晁子…めぇ……」
「…何の夢を見ておられるか…」


おそらく晁子殿の夢でも見ているのだろう。

余程あの時の事が悔しかったのか…夢にまで現れるとは、幸姫もお可哀想な方だ…。

せめて、良い夢でも見ていただければ…。


拙者はそっと、幸姫の前髪を指先で撫で下ろした。



「う…ん……き…りす、け…」
「…!!」



お、起こしたか!?



「…だ、いず……が…くる…よぉ……」

「……………はぁー…」



思わず溜め息が出た。
なんだ、起きておらぬのか。

本当に、一体何の夢を見ておられるか…。

大豆がくる…?
そんなに大豆が嫌いでござるか?

拙者は笑いを噛み殺し、幸姫に布団をかけ直した。


そのまま廊下に出ると、夜空に浮かんだ月を見上げた。


「…風情でござるなぁ…」