屋敷の廊下を見回り、問題がなければ拙者は寝る。

ちゃんとあの姫は寝ておるのだろうな…。

もしやまた夜更かしして忍者ごっこをしてるのでは…?


少し気になった拙者は、幸姫の眠る部屋へ向かった。
障子を開き、そっと中の様子を伺う。


「なっ…いない!?」


どこに行ったでござるか、あの姫は!!
せっかく敷いてやった布団に入った痕跡もないとは!

だったら敷かせるな…と拙者は溜め息を吐いて、幸姫を探した。



「……ね、……が………のよ…!」
「…か………よか………い…」

「………?」


途切れ途切れ聞こえる声…この距離からだと、政幸殿の部屋か。

拙者は自然と小走りで政幸殿の部屋へ参った。


「失礼致しまする!」

「キャーッ!! お化けーッ!!」
「幸、よく見ろ…鬼のような形相をした、ただの霧助だ」

「…幸姫も政幸殿も、拙者を怒らせたいのでござるか?」


驚いて政幸殿に抱き着く幸姫と、その頭を撫でる政幸殿。

…二人して何をやっておりまするか。


「幸が怖くて一人じゃ眠れないと言ってな…一緒に寝る所だったんだ」

「…幸姫、よもやあの御嵬寺での肝試しが原因等申されぬでござろうな…」
「うぅ…だって、怖いんだもん…」


拙者は腰に手を当て、呆れた顔で幸姫を見下ろした。

そんな事になるから、拙者は反対したのだ…。
自業自得でござろう、幸姫…。


「霧助も一緒に寝よう!!」
「はっ!? ば、なん、なっ、何を申されまする!?」
「ほら、こっち!兄上が右、霧助が左で私が真ん中!」
「なるほど、川の字か…。よし、霧助…こい!」
「ま、政幸殿!?」

「捕まえろーッ!!」
「霧助、観念しろ!!」

「ギャアーッ!!」