「ねぇ、もしかしてあんた…賽銭箱にお金入れちゃったの?」
「だ、だったら何よ!」


晁子殿はニヤニヤと笑いながら拙者を見た。
非常に不愉快でござる。


「じゃあ、あんた忍と恋仲になるのね。アハハハハ!可哀想、忍なんかと恋仲になるなんて!」


無遠慮に爆笑する晁子殿を見て、拙者は思わず無効だと申そうとした。

しかし…。


「霧助を悪く言わないでよ!」

「…幸姫?」


「霧助はねぇ、すっごく強い忍者なの!おまけに料理が上手で、裁縫も上手くて、作法だってあんたより知ってるんだから!」

「アハハハ、忍がそんな事してるの?笑えちゃうわ」
「そ、それに…それに…っ!」

「幸姫、もう良うござりまする。充分でござるよ」


目から涙をたっぷり溢れさせ、止める拙者を無視し尚も幸姫は赤い顔で叫んだ。




「あんたの男なんかより、ずーっと、ず~~~……っと、カッコいいんだから!!」

「…!!」


「あっそう、じゃせいぜい仲良くすれば」


ふん、と鼻を鳴らして晁子殿はそのまま寺の中へ入って行った。


取り残された拙者達は、しばしその場に佇んだ。

拙者は未だに興奮する幸姫の頭を撫でた。



「幸姫…大丈夫でござるか?」
「グスッ…だ、大丈夫!!」


拙者の手を振り払い、赤い顔で俯いてしまった幸姫。

拙者は涙を拭うその手を取り、階段を降りた。


「幸姫…先程はありがとうございまする」
「べ、別に深い意味はないんだかね!晁子を見返す為に本当の事を言っただけなの!」


照れてしまわれた幸姫と一緒に、拙者達は屋敷へ戻った。