―――ガタッ!!

「キャーッ!!」
「只の鼠でござるよ、幸姫!」


やれやれ、そんなに怖がるのなら最初から肝試し等しなければ良いものを…。

拙者にしがみつき、頑なに離れぬこの恐がり姫を励ましながらの肝試し。
疲れるだけで何の得があると申すのだ。


「も、もももう出よう霧助!」
「帰るりまするか?」


呆れた拙者に、こくこくと何度も頷く幸姫。

まだ寺の中に入って少ししか経っておらぬと申すのに…。
とんだ無駄足だったな。

「ね、霧助…私達、とり憑かれたりしないよね…?」
「わかりませぬ。肝試し等致せばとり憑かれるのでは?」
「うそ…ど、どうしよう~!」
「知りませぬよ!あーもう、引っ付かないで下され!!」


その後幸姫は、賽銭箱に金を入れれば大丈夫等と阿呆な事を申し、止める拙者を振り払い金を入れた。

そんな苦し紛れの抗いを致しても、焼け石に水でござる。


そして、寺から出て拙者達は前から歩いてくる人物に…目を疑った。


「あ…あーっ!晁子!!」
「なによ、神代のダメダメ姫じゃない」


なんと、拙者達の目の前にはあの晁子殿がいた。
それも、知らぬ顔の美男を連れて。

腕を組み合い寄り添う様から、どうやら二人は恋仲らしい。


「何しに来たのよ!」
「何って…見てわからないの?あたし達、御参りに来たのよ」
「御参り…?」


晁子殿は小馬鹿にしたように笑い、拙者達の後ろにある賽銭箱を指差した。


「あんた知らないの?このお寺、縁結びの寺なのよ?」
「え…?」

「本当に知らないで来たの?馬鹿ねぇ、縁結びの御嵬寺って言ったら、有名じゃない!」

「え…え、え~っ!?」


呆然と佇む拙者と、驚愕する幸姫を見て、晁子殿は腹を抱えて笑った。