「幸ィ~っ!!」
「兄上っ…苦しいよ」


屋敷に戻ると、挙動不審な政幸殿が待ち構えていた。

幸姫の姿を見ると、政幸殿はぶわりと涙を溢し、幸姫に抱き付いた。
その衝動で倒れ掛けた幸姫を、慌てて抑える。


「心配したのだぞ!突然家出等、もう二度としないでくれ!!」
「ごめんなさい、兄上…」

「それにしても幸姫、一体何故家出等致した」
「あぁ、それは兄上の誕生日に向けて贈り物を探しに……って、何言わせてるのよ霧助!」
「拙者はただ訊いただけでごさる!!」

「誕生日…?幸、それは…」
「…~そうよ」


幸姫は何処からともなく、小さな花を取り出した。

幸姫、その花は…。


「お誕生日、おめでとう兄上」
「~っ、幸!!」
「きゃあっ!!」


歓喜に幸姫を抱き締める政幸殿。

最早涙で顔がびしょびしょでござるな。


「幸、俺は…俺はなんて鈍感なんだ!自分の生まれた日をすっかり忘れていた!お前のような優しい妹を持てて、俺は最高の幸福者だ!」

「えへへ…嬉しい?兄上♪」
「勿論!今夜は宴だ!!幸の優しさに、俺は感服したぞ!」
「やったぁ!久々の宴だ♪」


手を取り合って喜ぶ御二人。
拙者は、どこかその姿が懐かしく思えた。


『あなた、ついに身籠りました!』

『なに!? そうか、ようやく身籠ったか!!』

『うふふ…今度は女子かしらね…』

『男子でも女子でも構わぬ!元気な子が産まれればな!! しかし、女子であれば、秋姫に似て愛らしいのだろうな!!』

『まぁ、あなたったら…』



――――政明殿、秋姫、貴殿方のお子は、今こうして真に元気でござるよ。

どうか天国で、御二人を見守って下され…。