―――キィンッ!!


弾かれた忍刀が火花を放つ。
辺りに突き刺さるはクナイや手裏剣。


「どうした…もう終わりか!」
「チッ…!!」


背後に回られ、素早く飛び退く。
狐太刀の振りかざしたクナイが空を斬る。

拙者と狐太刀の力量はほぼ互角であった。
そして、行う攻撃もほぼ同じである。

クルクルとクナイを回し、狐太刀はどこか得意気に言った。


「答えろ、霧助。お前は一体何の為に…闘う!」
「くっ…!!」


回していたクナイを投げ放ち、拙者は顔面に刺さる寸前に弾き落とす。

しかし、狐太刀の方へ目をやれば、奴はその場から消え失せていた。
慌てて辺りを見渡し、警戒する。


「…!そこか!!」

真上から影が被さり、天を見上げてクナイを放った。

「見破ったつもりか!ここだ、うつけ者!!」
「なにっ!!グッ…!」


しかし、声は拙者の真下から聞こえた。
すぐに顔を下に向けたが、一足遅く、鳩尾を忍刀の柄で突かれる。

空から振り降りるは、狐太刀の仮面…狐の面だった。


「…!狐太刀、お主…」
「…そうだ、俺には…肝心な"モノ"がない」


腹を押さえつつも狐太刀を見ると、…なんと奴には"顔"がなかった。
暗闇で覆われたような、まるでその部分だけ影が掛かったような…面妖な顔。


「俺に今必要なのは、お前の"顔"だ!」
「…!!」


狐太刀は、拙者の顔を中心に狙ってきた。
その荒ぶり様はまるで、拙者の顔を剥がさんかのように。

無論拙者もその攻撃をクナイで防ぐ。

「霧助!!俺はお前の顔を奪い、新たなる"日向霧助"となる!!」
「そうは…させぬ!!」



―――ブシュッ!!



…夜闇に、赤黒い血が舞った。