「幸姫!待たれよ!!」
「へっーんだ!捕まえてごらんなさ~い!!」
「確保」
「キャーッ!!ちょっと、先回りとか卑怯!!」
「捕まえろと申したのは幸姫ではござらぬか!第一に、拙者の手裏剣を返して下され!!」
「イヤだ!!」
「い、イヤだ!?」


このやりとりも、一体何千と行ってきたことか…。
相も変わらずお転婆な姫でござる。


「もう、霧助は口煩いんだから!おまけにケチ!!」
「原因は全て幸姫にござろう!?何を申されるか!?」


どうせ、幸姫にとって拙者は口煩い忍。
狐太刀のように優しく等出来ぬケチな男でござるよ。


「さ、返して下され」
「…脅さないんだ」
「は?」

「霧助、最近クナイを出さなくなったね」
「…!!」


そ、それは…幸姫が嫌がるから…。

―――待てよ、拙者は何故クナイを出さない?

以前はすんなり出せたと申すのに、何故今になって出せぬのだ。


「…そ、そんなことはどうでも良うございまする!さっさと返して下され!!」
「…わ、わかったから…そんなに怒らないでよ」
「……………」


少し怯えた様子の幸姫は、恐る恐る拙者に手裏剣を返してきた。

拙者は黙ってそれを受けとる。



―――なんと厳しい男だ。



「…っ!?」
「…どうしたの?霧助」
「……何でもござりませぬ」


今…確かに拙者の耳元で…。

あの声は……いや、そんな馬鹿な…。
きっと任務続きで疲れておるのだ。

拙者は手裏剣を受け取ると、そのまま幸姫を残しその場を去った。