毎夜毎夜、拙者は任務が終わると狐太刀となり幸姫の元へ参った。

幸姫もそれを今か今かと待ち構えて、狐太刀が来ると頬を上気させて喜んだ。


「ね、狐太刀」
「何だ、幸」

「狐太刀はお団子、好き?」
「…!」


だ、団子だと…?
拙者は団子と餅は苦手でござる。

…しかし、ここで否定すれば怪しまれる。


「…す、好きだ…」
「本当に!?良かったぁ♪実はとびきり美味しいお団子用意してたんだぁ♪」
「…あ、ありがとう…」


はい♪と団子を差し出す幸姫。
流石に食べ掛けではない、串先が見えない団子を。

拙者は恐る恐る口にした。
飲み込もうにも物が物、拙者は致仕方なく噛んで飲み込んだ。

独特のモチモチ感…なるべく眉間にシワを寄せないように、幸姫に笑いかけた。


「う…美味いな…」
「本当に?汗が凄いよ?」
「大丈夫、だ…」


全て食べきり、串を皿に置いた。
幸姫は嬉しそうな顔で笑う。


「良かった、私と同じ団子仲間で♪」
「団子仲間…?」
「そ、団子大好き仲間!霧助は団子もお餅も嫌いだから、一緒に食べて美味しさをわかち合えないの。つまんないよ」
「苦手なものは、仕方ないな…」


あぁ、腹がムカムカする。
団子のせい、これはきっと団子せいだ。

拙者は決して、狐太刀に妬いてなどおらぬ。

ニコニコと"狐太刀"に笑いかける幸姫を見て、拙者はそう思った。