肩がこる…全く、今回の任務は面倒であった。

戦の視察は神経を使うものだ、忍を撒くのに時間がかかった…やれやれでござる。


「む、そういえば…今日は幸姫を見ておらぬな…」


あのお転婆姫は、一体どうしておるのか…。
廊下を歩く女人に尋ねた。


「すまぬ、じゃじゃ馬を見掛けなかったか」
「あぁ、幸姫様なら、鯉池の所で鞠つきされておられました」
「かたじけない」


鯉池か…屋敷の真裏だな。

…というか、じゃじゃ馬で幸姫という事がわかったのはどういう事だ。


「ふむ、ここか…」

「ガボガボガボボボ…」
「わあぁぁぁぁ!!幸姫ぇぇぇ!!」


幸姫が、何故か鯉池にハマっておる!!
で、溺死する前に早く引き出さねば!!


「幸姫!!無事でござるか!?」
「ぶはっ!!…ハァ…ハァ…ハァ…!!あー…死ぬかと思った…」
「お痛わしや幸姫…一体何が起きたでござる?」
「鯉捕獲しようとしたら落ちた…」
「な、何故鞠遊びから鯉捕獲に!?」


たまにこの姫の仕出かす事が理解できぬ。
一度医者に診てもらった方が良いのでは…?


「鯉って綺麗よね…見とれちゃう」
「乙女ぶっても、今の幸姫の姿は目も当てられぬぞ」
「池の女神と呼びなさい」
「そんな生臭い女神いてたまるか」


ハァ…また仕事が増えたでござる…。
この姫は仕事を与える天才でござるな…。


「幸姫、お召し物を変えなされよ」
「えー…面倒くさい」
「生臭いよりよっぽどマシでござる!つべこべ言わずにさっさと着替えられよ!!」
「わかったから、クナイしまって!!」


生臭い姫君など、恥ずかしくて面に出せぬ。
意地でも湯あみに入って頂く!!