「伝説の忍三兄弟、結集初の任務は御嵬寺(おんがいじ)の生臭坊主を懲らしめる事だ」


兄上は目元を微笑ませ、拙者達に面を渡してきた。

拙者には狐の面を、晴之助には般若の面。
兄上は能の面を装着し、腕を組んだ。


「被れ。以前のように、な」

「…懐かしいでござるな」
「相変わらず用意周到な兄者だ」


十数年見なかったその面は、きちんと手入れされ以前と変わらぬ形で残っていた。

―――…再び、この面を被る日が来ようとはな…。

拙者は慣れた手付きで面を被った。


「晴之助、その面は重くないか?鉄製だぞ」
「心配無用」

「そうか、では参るぞ」


御嵬寺の和尚は、町中で腕の立つ陰陽師としても有名であった。

しかし、それと同時にインチキ者、詐欺師としても言われていた。

何て事のない民に霊が憑いておると騙し、不正に金をむしりとると…。


「兄上、拙者達は一体何を致せばよい?」
「なに、簡単な事だ。耳を貸せ」


兄上は拙者を手招き呼び寄せた。
側に寄り、兄上に耳を近づける。


「…ふっ…」
「くっ!?」


―――ガツンッ!!


「…~っ、何をするんだ霧助。痛いではないか」
「それは拙者の台詞でござる!!耳を貸せと申すからそう致したというのに、兄上が息を吹き掛けるからでござろう!?」
「布越しなら大丈夫だと思ったんだ…」

「おい、さっさと任務内容を話せ」


拙者達のやりとりを見かねた晴之助が、苛立った様子でそう申した。


「はは、すまない。耳を貸せ…霧助、もうしないからクナイを構えるのは止めてくれ」


そうして、兄上は拙者達に任務内容を話した。