とある日の午後、拙者は矢文に呼び出しされ、近場の森の中にきた。

日が暮れ始めた頃、数本のクナイが拙者の足下と顔に投げられた。
ギリギリの所で避け、木上を見上げる。


「会うなりクナイを投げるのは止めぬか、晴之助」
「黙れ、貴様に指図される覚えはない」


晴之助は憎悪に満ちた顔で木の枝から飛び降りた。

降りると同時に忍刀を振りかざされ、拙者は横に飛び退いく。


「危ないでござろう!危うく真っ二つになるところであったぞ」
「元よりそのつもりだ!」


腰から忍刀を引き抜き、飛び掛かる晴之助の攻撃を防いだ。
いつ防いでも、重たい攻撃でござるな…。


「急に呼び出しておいて、それはないでござろう!」
「何だと…?貴様が俺を呼び出したのではないか!」
「…!?どういうことでござる?」

「二人共、そこまでだ」
「「…!!」」


拙者達の間の地面に刺さる、一本の矢。

拙者と晴之助は、ほぼ同時にその場から飛び退いた。


「相も変わらず不仲だな…」

「兄上!!」
「雨之丸の兄者…!!」


丘の上から弓を構える兄上の姿があった。


「今日お前達を呼び出したのは、俺だ」
「兄上が…?」
「……………」


丘から飛び降り、拙者達の元へ歩み寄る兄上。

いつもの薬売りの着物でない、久しく見た兄上の忍装束。
口元を隠し、その紺色の、夜闇に溶け込む姿で兄上は申した。


「霧助、晴之助…お前達に相談がある」
「相談…?と、申されますると?」

「"伝説の忍三兄弟"…再び結集しないか?」
「「…!!」」


拙者達の間に、冷たいそよ風が通った。