「霧助!!」
「ッ!?何奴…うっ!!」


突然、何者かに何かを投げ付けられた。

訳がわからずも、拙者はそれをクナイで弾く。
しかし、それはクナイに当たると四方に弾け、薄茶色の煙が拙者を包む。


「ゲホッ!ゴホッ…!!」
「ふっ…油断したな、霧助」
「あ…兄上…!!」


痺れる体が崩れ落ち、這いつくばった格好で拙者は自分の兄を見上げた。

不敵に笑い、黒い手玉を眺めている。


「やはりよく効いている…俺の調合した痺れ玉は…」
「一体…何のつもりで…ござりまする…!!」
「ふふふ…その体では思うように動けまい、悔しいなぁ…霧助よ」
「くっ…!!」


兄上は動けぬ拙者を抱き上げると、屋敷から連れ出した。

移り変わる風景と兄上の顔を見ながら、拙者は猛抗議する。


「何の真似でござる…兄上…!!」
「お前が中々抱かせてくれぬから、強行手段に出たまでだ」
「…!?や、止めて下され!!それだけは…それだけは止めて下され兄上!!」
「俺の性欲も限界なのだよ、霧助」
「いっ…嫌でござる!!はっ、離して下されっ!!」


何と言うことだ、この血を分けた兄に抱かれる日が来ようとは!!

男に抱かれる等、拙者は絶対嫌でござる!!


「霧助…どこがいい?湖か、森の中か…俺はどこでも構わないぞ」
「どこも嫌でござる!!今すぐ離さぬと絶交でござるよ兄上!!」
「あぁ、俺の股間も絶好調だ」
「ひぃぃぃっ!!」


鳥肌が立った!!
気持ちの悪い台詞を申すな!!

あぁ…もう、限界でござる…。


「……………」
「…?どうした、霧助」

「……なせ」
「なに?」
「離せ、と言っている」
「…!!霧助、お前…もしや…」


―――チャキ…。


「…っ、わかった。離すから、そのクナイをしまってくれ」



―――……気が付くと、拙者は屋敷の布団に寝かされていた。

「…何故、拙者寝ていたのでござろう…」