「ねぇ、霧助」
「…?如何なされた、幸姫」

「霧助に、家族はいないの?」
「…………」


家族でござるか…。
そういえば、この間兄弟が勢揃いしたな…。


「拙者の両親は、物心ついた時にはもう還らぬ人になっていたでござるな」
「そ、そうなんだ…じゃあ、もう家族はいないの?」

「いえ、拙者には兄弟がおりまする」
「へぇー!何人兄弟?」
「三人兄弟でござる」
「どんな兄弟なの?」
「あー…うー…その、何と申すか…」


拙者はそこで口を濁した。
あんな濃い兄弟等、紹介しようにもしにくい兄弟でござる。


「兄は雨之丸、弟は晴之助と申しまする」
「じゃ、霧助は真ん中なんだー」
「厄介な位置でござるよ。兄に後ろを狙われ、弟には目の敵にされ…」
「…霧助、喧嘩でもしたの?」
「兄はともかく、弟に命を狙われる理由が全くわかりませぬ。このところ、本当に参っておりまする」


拙者は茶を飲みながらそう申した。

幸姫はさして内容に食い付かず、団子を食べながら相槌を打つ。


「正直、幸姫が羨ましいでござるよ」
「何で?」
「まともな兄君をお持ちではござらぬか」
「へっへーん!いいでしょ~っ!」
「うぬ、誠に羨ましいでござる。ほら、口に餡が付いておりまするよ」


幸姫の口元を親指で拭いながら、拙者は苦笑した。

あぁ…拙者にも、政幸殿のような兄と幸姫のような妹がいれば、こんなに悩む必要はないと申すのに…。


「ほら、霧助も食べた食べた♪」
「だから、拙者は団子や餅が苦手でござる」
「苦手でも食べてよ~!」
「だからっ、串先を人に向けないで下され!!」


前言撤回、やはりこの姫が妹だと拙者が困る!