「幸姫、拙者はよく頑張ったと思いまする」
「幸、そう気を落とすな。お前はよくやった」

「私なんか…やっぱりダメな姫なのよーッ!!」

「否定はしませぬ」
「これ、霧助!」
「冗談でござるよ」


幸姫は花嫁修行を行ったが、料理・裁縫・作法…どれも失敗に終わった。

それはもう、拙者が驚く程料理下手で、不器用で、無知で…今まで一体何を学んできたのか知りたい位に。


「どうせ…どうせ私なんか…!」
「幸、あぁ…我が妹、どうか泣かないでおくれ」
「兄上には私の気持ちなんかわからないのよーッ!!」


すっかりしょげてしまった幸姫は、部屋に引き込もってしまわれた。

今、拙者と政幸殿で必死の慰みを行っておる。


「やっぱり私は…花嫁なんかなれっこないわ!!きっと、一生独りぼっちなのよーッ!!」
「幸、そんなことはない!幸は充分美しい!」
「顔の話じゃない!兄上のバカっ!!」
「幸…」



「いい加減にするでござるよ、幸姫」

「霧助…?」
「…何よ、霧助だって、どうせ私のことをダメダメな姫だと思ってるんでしょ…」

「何を申されるか、黙って聞いていればぐじぐじと…だから晁子殿に馬鹿にされるのでござるよ」
「…!」
「霧助、言い過ぎだぞ」

「いいえ政幸殿、ここは言わせて頂きまする」


拙者は障子越しの幸姫に言い聞かせた。


「幸姫は、今までのご自分と変わろうとお思い花嫁修行を決案し、そして決行した。失敗したとか上手く出来なかったとか、問題はそこではござらぬ」
「…………」

「幸姫が最後まで諦めず、やり通した事が、大きな成果でござろう。それを、自分は駄目な姫だと目を背け…悔しくないのでござるか?」
「…悔しいよ」

「では、胸を張られませ幸姫。堂々と構えなされ幸姫。貴女には、拙者がついておるではござらぬか」
「…!!」

「…霧助、お前…」

「拙者は、これにて失礼致しまする」


この言葉が、気持ちが、幸姫に伝わる事を祈り、拙者はその場を後にした。