拙者には、相棒がいる。
鷹の夜叉丸だ。


ピィ―――!


指笛を吹けば、文字どおり飛んでくる。


「………………」


ピィ―――ッ!!


指笛を吹けば、文字どおり飛んでくる…はずでござるよ!?
何故飛んで参らぬ!?

もしや、何かに巻き込まれて…!?


「夜叉丸ーッ!!」
「あ、霧助~!」
「幸姫…」


聞き慣れた声に振り向くと、鷹を抱いた幸姫が…。


「って夜叉丸ーッ!!」
「キャァッ!!」


拙者は慌てて夜叉丸を幸姫から奪い返した。
心なしか、少しげっそりしている夜叉丸は、弱々しくピッピィ…と鳴いた。


「夜叉丸!!…幸姫、夜叉丸に何を致した!?」
「何って…鬼遊び」
「お、鬼遊び!?普通鳥と鬼遊び致すか!?」


※鬼遊び…現代でいう鬼ごっこ


「夜叉丸が…これ程までにぐったりするとは…。幸姫、一体どういう鬼遊びを致した…」
「飛ぶから、私も木の上から飛んで捕まえたの!」
「幸姫!それは飛んでござらぬ!!跳んでるのだ!人間は飛べませぬ!!」
「飛べるもん!!…兄上なら」
「貴女はご自分の兄君を何だと思っておられる!?政幸殿も飛べませぬ!!」

「俺がどうした?」
「兄上♪」
「政幸殿!!」


幸姫は政幸殿の姿を見つけると、真っ先に彼の背中へ隠れた。


「兄上~霧助が苛める~」
「それは真か、霧助!!」
「幸姫!!逆さ釣りに致すぞ!?」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「幸姫、待たれよ!!」


「仲が良いのか、悪いのか…」