幸姫のお守りが終わった後は、当主のお守り。

拙者はいつものように、当主政幸殿の執務を見回りに参った。
部屋は静か、これもいつものことでござる。


「霧助か…入れ」
「はっ、失礼致す」


流石、若き鬼武者として名を馳せる政幸殿。

拙者の気配を感じ取っていた。


「妹が世話をかけたな」
「全くでござるよ」
「…否定しろ」


政幸殿は執務を止め、拙者に向き直る。

短い黒髪、筋のよい顔立ち、誰がこの若き青年を戦場の鬼と思うか。

元知将の少年が、今では鬼武者と呼ばれる屋敷の若旦那…。
立派に成長したでござるなぁ…。


「どうした、霧助。黙り込んで…」
「いえ…何でもござらぬ。引き継ぎ、執務を進めて下され」
「あぁ、わかった。…すまない、そこの茶をとってもらえないか?」
「承知」


女人が持ってきた茶だろう。

毒は……ふむ、入っておらぬな。
匂いに異常なし。


「政幸殿」
「あぁ、ありがとう」


――――ズズッ…。





ボワッ!!




「ぶっ!!」
「こっ、これは…!?」


煙玉!!



「幸姫ーッ!!」


拙者の怒号と、大量の煙が屋敷に蔓延った。