流石、城下町は賑わっておるな。
人々の忙しなく働く姿は、見ていて和やかな気持ちになれる。
平和な証だ。


「霧助!お団子食べたい♪」
「あ、勝手に離れないで下され!!」


このお転婆姫がいる限り、拙者に平和は訪れぬか…。


「霧助、三色団子買って♪」
「忍に奢ってもらおうとしないで下され、情けない!」


とは言うものの、金を幸姫に渡しておく訳にもいかぬ。
この姫に金銭管理は、到底できない。

拙者は仕方なく己の財布を開いた。


「おいしーっ!!ありがとう、霧助!」
「もうこれっきりでござるよ」


すると、何を思ったか…幸姫は拙者に団子を突き出してきた。
それも、食べ掛けの、竹串が尖った先を。


「危ないでござるな!拙者の目を潰す気でござるか!?」
「はい、あ~ん♪」
「"あ~ん♪"じゃないでござる!」


無邪気に恐ろしい事を致すな、この姫は!
しかも人の話を聞かぬ!


「食べないの?」
「拙者、餅や団子は苦手でござる」
「え~!!私に大豆食えとか好き嫌いするなとか言ったくせに!!」
「出された分はきちんと食べまする!こういった処で自ら進んで食べようとしないだけでござるよ!!」
「ずる~い!!」
「ズルい!?奢ってもらっといて何を申すか!?」
「食え!!ほれ!!」
「だから先の部分を人に向けないで下され!!刺さったら大事でござる!第一に、それは幸姫の食べ掛けでござろう!?」


辺りからクスクスと忍び笑いが聞こえる…。

あぁ恥ずかしい。
やはりこの姫の考えている事が理解出来ぬ。


「霧助のバーカ、もう知らない!」
「最後に馬鹿呼ばわりされるとは…なんと図々しい事か」
「全部食べちゃうからねっ!」
「最初からそうして下され。さすれば余計な言い争いは無かったでござるよ」
「人の好意を…」
「好意!?悪意の間違いでござろう!?」


本当に疲れる姫でござる…。