良き天気、青天白日でござるな。
ようやく夏らしくなってきておる。

これなら、干した着物も早く乾くであろう。


「霧助ーッ!!」
「危ない!!」
「きゃっ!」


背後から飛び付こうとしてくる幸姫の気配を感じ取り、拙者はその体を上手く巻き引き込み、胡座の中に寝かせた。

特に驚いた様子もなく、幸姫は無邪気な笑顔を見せた。


「幸姫!突然飛び付かないで下され、危ないでござる!」
「ねぇ、霧助!城下町に行こうよ!」
「無視でござるか!?」


城下町とな、そういえばしばし出ていなかったな。
戦もあったし、出る暇もなかったと言えばなかったが…。


「幸姫、拙者は朝、忙しいと申した筈でござるよ」
「知らない、行こ!」
「し、知らない!?」


何をなかったことにしておるか!
全くこのお転婆姫は、人の話を聞かぬな!


「申し訳ござりませぬ、拙者にはまだやることが…」
「行こうよーッ!霧助が一緒じゃなきゃヤダ!!」
「駄々をこねないで下され…拙者も意地悪で申しておる訳ではござらぬ」

「何だ、騒々しい…」
「あ、兄上♪」
「政幸殿…」


廊下から現れた政幸殿。
どうやら執務は終わったようでござるな。


「霧助が一緒に城下町に行ってくれないの!」
「拙者は忙しいのでござるよ、幸姫」
「ヤダ!!一緒にきて!」

「一緒に行けばよいではないか」
「ほら~!」
「政幸殿!?」


政幸殿まで何を申すか!?


「霧助、その作業は今しなくてはならぬのか?」
「…いえ、そういう訳ではござらぬが…」
「では、幸のわがままに付き合ってくれぬか?」


今までにも充分、わがままには付き合わされておりまする。


「………承知致した」
「やったぁ♪」


はぁー…拙者に休みはござらぬな…。