「兄上!!おかえりーッ!!」
「確保」
「きゃーっ!!ちょっと霧助、放してよもー!!妹と兄の、感動の再開を邪魔しないでー!」
「多少なり負傷した兄君に突進致す妹君もどうかと思いまする」


やれやれ、やはりこの姫は相変わらずでござるな。
己の突進の破壊力が如何なるものか、考えた事はないのであろうか?

…ないのであろうな。


「幸、いい子にして待っていたか?」
「もっちろん!」
「そうか、やはり幸は立派だな」
「でっしょー?」


何をデレデレしておるかこの姫は。
戦後の屋敷は必ずどこか変わっておるではないか。

現に、お二人の後ろにある松の木が、ポッキリ逝ってしまっておる。
一体何を仕出かしたでござる、幸姫…。


「あ、霧助!お土産は?」
「お、お土産!?戦に土産はござらぬよ!?拙者達は遊びに行った訳ではござらぬ!」
「えぇ!?ないのー!?」
「何をさも当然のように申しておられまする!?」


あの、戦前の約束は一体何であったのか…。
拙者、必死に早く終らせたと申すのに…。


「…幸姫、こちらへ」
「…?なに?」


拙者は呆れつつも、忍袋から例のものを取り出した。

幸姫と同じ視線になるように屈み込み、その黒髪にそれを飾った。


「…!!霧助、これって…!」
「手土産でござる。何とはなしに思い出し、一つ頂戴して参った」

「霧助…その花は?」
「これは、鬼百合でござる」


大きな花が特徴的だが、たまたま小さめのものが見付かって良かった。
幸姫の黒髪によく映える、橙色の花弁はまだ淡い。


「もう少し経てば、色艶のよい鬼百合が咲きまする」
「霧助!ありがとうっ♪」
「うぬ」


鬼百合の花言葉は、"陽気"、そして"華麗"。
まさに、幸姫にぴったりの花でござりまする。

拙者は幸姫の喜ぶ笑顔をみて、そう思った。