「では、屋敷を空ける間、幸を頼むぞ」
「承知致しました、若旦那」

「兄上…」
「心配するな、幸。俺達は必ず戻ってくる」
「拙者がいなくても、ちゃんと顔を洗うでござるよ」
「わ、わかってるよ!!」


女人と家来に幸姫を任せ、拙者達は屋敷を出た。

雲行きが怪しい…これは、雨が降るな…。
…ヤりにくい戦になりそうだ。

拙者は忍部隊を率いて、森の中を駆け抜けた。
下の道では、政幸殿が軍を率いて馬を走らせておる。


「霧助!!本当にこの道で大丈夫なのか!?」


馬を走らせながら、政幸殿は拙者に問う。
忍部隊を先に行かせ、馬の速さに合わせると拙者は政幸殿に答えた。


「ご心配召されるな!この道から行けば、芳垣軍の背後に回れまする!下見は厳重に、先の忍も既に始末致した!!例え森に火を放たれようとも、雨が降るので問題ござらぬ!!」

「流石だな!!では進むぞ!!」
「御意!!」


幸姫は大丈夫であろうか…。
拙者達がいないとなれば、頼るは家来のみ…。

万が一何か起これば、夜叉丸が逐一様子を伝えにくる。

出来れば避けたい奇襲だ…夜叉丸や家来にも限界がある。
この戦も、早く終わらせると致すか。


拙者は移動速度を上げ、森を進む。
移動の前に始末した、敵軍の忍の手裏剣が邪魔くさい。

部下にこれも始末させておけば良かった。
今更何を言っても遅いが…踏まぬようにせねば。


「霧助!!」
「…!如何した、政幸殿!!」

「忍の遺体が邪魔だ!!」
「あちゃぁ…」


まさか、取り残しがあっとは…。
急いでおったから、雑に片付けていたな…そういえば…。

拙者は部下に指示を出し、先の道に転がる敵忍の遺体を処理させた。