【短】携帯のパスワード




ああ、なんか最悪な目覚めだよもう。



ショートカットの髪を鏡の前で整える。

寝癖、ちゃんと直らないしさ。



……将司のばか!課題もやらないで寝ちゃったよ。

杏奈に見せてもらうんだからね。



そんな訳のわからないことを考えながら学校に向かった。







「はよー」





朝、クラスに入ると、駆け寄ってきたのが将司。

顔が熱くなるけど、昨日のそっけなさを思い出すと

その熱が冷めていくみたいだった。





「好きな人いたんだな。

あ、そうそう、柚さん」

「なに」





なんだか見下ろされるのも気にくわない。

って、私はなんでこんなにムキになってんだ。



とにかく、私は自分の窓側の席だけ見つめた。





「俺、パスワード『5151』にしたんだよな」

「メールくるといいね」

「……あのさ、」





なんだよなんだよ。

結局好きな人いたのか。

もういいもん。





「なに、早く言わなきゃ席行っちゃうよ?」





あまり見ないうじうじした姿に、そんな意地悪なことを言う。

話しかけられただけで、すごく嬉しくて、幸せな気持ちなるのにね。



こいつはタイミングが悪いんだよ、もう。





「『5151』にしたからさ、いや、あ、あのさ……

なんて言うか…………きょ、今日柚は俺に……

メールを、す、すること!」





初めて見た、りんごみたいに真っ赤になる将司をぽかりと見ることしかできなかった。








おわり