「今日―もいー天気だなぁー」


やっぱり屋上は最高だ。

朝礼だのホームルームだのと、面倒くさいと心から思う。

そんな形式じみたことをやるくらいなら、屋上でお日様の光を目いっぱい浴びた方がよっぽどいい。

人生楽に生きろよお前ら!

今生真面目な顔して教室にいる全員に叫びたい。

寝転がっている俺の目の前には真っ青な空、雲がいい感じに漂っている。

その上暖かい日差しとゆるい風とくればもう言うことないよな!

こんな感じで堂々とサボっている俺のことを一応紹介しとくよ。

斎藤真。高校1年生。

入学したてのくせに生意気なと思う人もいるかもしれないけど、残念。俺に常識は基本通じない。

髪の色、瞳の色は全然普通のこげ茶だ。別に不良じゃないからな。

身長は170cmちょいじゃなかったかな?

悪い。何せ、身体測定なんて適当にしかやってないもんだからさ。

性格は…まぁサボるけど、朝と嫌いな物理と世界史だけだし、ひどい問題児ってほどでもないよ。

あと俺は形式とか世間体とか、そういうことしか考えない奴が1番むかつく。なんかそういう考え方があわないんだ。

ま、そういうわけで、今日も自由に生きてます。





キィ…



うとうとといつものように微睡んでいたら、屋上の扉が開く音がした。

ここはあんまり人が来ない。

なぜだか知らないけど、噂で退学になった不良どもがたむろっていたと聞いたことがある。

俺はそういうの気にしないから、この空間独り占めにできてるんだけどな。

誰が来ようと関係ないけど、少しだけ気になって、目だけ動かしてその人物を探してみた。


あ…きれいな髪だな…


見たとたん、不意にそう思った。

腰まで隠れるストレートの黒い髪は、風にゆられてさらさらと流れていた。

フェンスにもたれかかっているので、表情までは分からないが、なんとなく寂しそうな切なそうなそんな雰囲気をしている。

相手は気づいていないのか、ずっとグラウンドを見ている。

俺は、なぜだか分からないけど、目が離せなかった。
ずっと見ていたい。
青い空が
暖かい日差しが。
心地いい風が。
見渡しのよいグラウンドが。
全てが、写真のように、鮮やかに。
2人だけの空間が、一瞬止まったような気がした。


この頃から、彼女に恋をしていた。
自分では気づかなかった想いを、無意識のうちに優しく育てて。
大きく、大きく、なっていく。


Emergency

君に、恋をした。