「だいじょうぶ」



 彼はいつも、そう。

 笑った。


 彼女が、転びそうになったとき。

 彼は彼女の手を勢いよく引いて、その代わりに彼の方がこけた。
 一応受身は取っていたものの。


 彼女が、空から降ってきた大量の水を被りそうになったときも。

 彼女を押してまで、自分が身代わりになった。



 『ダイジョウブ』という言葉が。

 何かのおまじないのように聞こえた。



 呪文のように。


 まるで、唱えられているようで。