「ヒヨ・・・、俺帰るな」
「えっ?」



 彼女はがばっとクッションを抱えたまま起き上がる。
 そして彼の後姿に、どうして?とでも問いかけたそうな表情を投げた。

 もちろん、彼はそれをわかっていたけれど、気付かない振りをした。

 彼女の方は、全く分からない。

 何となく感じる、彼のまとっている空気が少しピリピリしている事くらいしか。





 パタン。

 彼は何も言わずに彼女の部屋を後にした。