茶道室に行けば、先輩はほにゃっと柔らかな笑顔で私を迎えてくれる。
和菓子を食べて幸せそうな顔を見せてくれる。
だけど
それはどんなに願ったって、私だけのモノになったりしないんだ。
それが分かっているのに、
これ以上スキになったら苦しいよ・・・。
だから、
会いたいけど
・・・行かない。
迷いを振り切るように弓を構える。
「どうした?調子悪いな。」
不意に背後で聞こえた声。
その声の主がそっと私の肘に触れる。
「曲がってる。顔あげて・・・顎引いて。」
その声に意識を集中させ、言われた通りにする。
たん!
真ン中とはいかないまでも今日の中では一番マトモ。
ほっと息を吐き出し、振り返る。
「アリガトウ、悠ちゃん。」