次の日の朝はいつもより早く家を出た。


特別な理由なんてない。


ただ、早く行けば二人で話せると思ったから……。


あの人はいつも早く来ていた。


だから、たぶん今日も……。


それだけ。


たったそう思うだけで不覚にもあたしの胸は高鳴る。


皮肉なものだ。




学校までは徒歩十五分。


二階まで階段を上がり、教室のドアを開けた。


やっぱり、いた……。


「……裕也」


ドアを開けた音に反応して、机に座っていた一人の男子が、あたしの方に振り向いた。


「唯織。おはよう」


クラスメートの板垣裕也があたしに笑いかける。


優しそうな王子様を連想させる笑顔。


この笑顔が、大好きだった。