屋台でかき氷やタコ焼きやラムネを飲んで祭りの雰囲気を楽しんだ。


祭りというのは傍から見たらただ飲み食いして騒ぐだけだ。でも、だから楽しい。


あたし達の母校でもある小学校の校庭は市内でも大きいことで有名で、そこに歩きづらいほどの人が密集していたから、知り合いに会うのはまず奇跡に近い。


そんな中あたしは見てしまった。


「あれ、美紗?」


一人でフライドポテトを買って美紗が待っているはずの場所に戻ると、そこに美紗の姿はなかった。


他の屋台にでも行っちゃったのかな。


その周辺を見回したり歩き回ったりしても、黄色地に真っ赤な牡丹が散っている浴衣を身に纏った美紗の姿がない。


五分前まで一緒にいたのに。


あたしは鞄の中から携帯を取り出して美紗の携帯に電話をかけた。


巾着の中の携帯を美紗が気づくかどうかは怪しいけど。


携帯を耳に当てながらもなお辺りを見回す。


その時、あたしの視界の隅に美紗が写った。


でも、すぐに声をかけることはできなかった。