我が弟、弘樹(ヒロキ)と太一はお互いの顔を凝視していた。


「弘樹……」

「太一、お前なんでここにいんの?」

「あれ、二人って知り合い?」


あたしは手に持った参考書で二人の間に入った。


「……姉ちゃん」

「はい?」

「知り合いどころか、親友なんだけど」

「へっ?」


弘樹は太一を指差しながら、「姉ちゃんが連れてきたの?」と呟く。


ちょっと、待てよ。


「弘樹に親友って言われると、なんか照れる」

「太一、気持ち悪いから抱き着くなよ」

「俺がいつ抱き着いたよ」

「昔はよく」

「え? 二人って、小さい頃からの付き合いなの?」


やばい、頭が混乱しつつある。


「もう十年近いよな」

「小学校上がってからすぐだもんな、俺らが殴り合いの大喧嘩したの」

「喧嘩あ!?」


小学校一年生で!?


「弘樹、あれってなんで喧嘩したんだっけ?」

「確かさ、好きな人被ったんじゃなかった? 当時クラスで一番モテてた女の子に、お互い俺がお似合いだとか言ってさ」

「そうだっけ。親が学校呼び出されたのは覚えてるけど」

「そんで今はこんなんだもんな」

「雨降って地固まるってやつだな」


お互いの顔を見てけらけら笑う二人にあたしはもう置いてけぼり。