急性大好き症候群

それから毎日、本当に毎日、あたしは太一の家にお邪魔した。


毎日太一の部屋で数学の問題と対峙している太一の姿を眺めて、質問されたらヒントを与える。


あたしはぎりぎりまで答えを教えなかった。


答えを教えたら太一のためにならない。試験は一人で解かなければならないのだ。


もはや家庭教師だよな、と密かに苦笑をこぼす。


いいけどさ。部活終わればあたしはいつでも暇だし。


教えればアイスも食べられるし。しかもけっこう高めの(太一の親がアイス好きでストックしているらしい)。


ちなみに怪しいことは何一つない。誰もいない家に男女二人がいても。


あたしは裕也が好きだし、太一にもラブラブな彼女がいる。


勉強の合間の休憩中に、あたしは太一からいろんな話を聞いた。


部活のこと。あたしの母校のこと。彼女のこと。


空手の全国大会はお盆中にあるらしく、勉強と並行して練習に励んでいるらしい。


彼女のことはほぼ惚気だ。このクソ暑い中キスしたとか、デートしたとか、終いには男女の営みまでこの間初めてしたとか。