急性大好き症候群

数学を根本的なとこから嫌いな太一に数学を教えることは容易なことではなくて、太一に数学の解き方を教えたら、気付けば外はオレンジ色と紫色が混じった色をしていた。


「うわっ、もう七時?」

「ご飯食べてく? うちの親、夜中まで帰ってこないけど、飯は置いてってるから」

「いいよ。帰る。太一は明日までにこの二ページを終わらせること。教科書見ながら解いていいから、今はとりあえず解き方を体に染み込ませる」

「はーい。ありがとうございました、先生ー」


太一は座りながら深々と頭を下げる。


「このままやってけば、一ヶ月で応用の一歩前までの問題は解けるよ。もともと頭はいいから、飲み込み早いね」

「一応、毎回学年で一桁の順位取ってるしな」


太一が自慢げに言うもんだから、あたしは苦笑する。


数学以外で点数稼いでるのか。


その方法では正直危険な賭けだ。


学校のテストならばその方法も通用するけど、高校入試はそう簡単には通用しない。万が一得意な英語や国語の問題が難しくて思うような点数がとれなかったらどうするのだ。


苦手科目が少ない人は、得意科目が多い人よりも断然有利だ。


それなりの高校を目指しているなら、尚更。


それも太一に言うと、「わかった。数学、頑張るよ」とやけに素直な返事を返されて正直驚いた。