急性大好き症候群

太一の部屋は二階の隅にあった。


一軒家だったらこれが標準、と言いたげの広さの部屋に、机とローテーブルとベッドと小さめのテレビが鎮座していた。


「あ、今冷房つけるから」


……と、冷暖房完備であろうエアコン。


太一がテーブルの上に置いてあるリモコンを操作してエアコンをつけた。


「……ここで生活できるね」


普通の中学生ができることじゃないよ。高校生でもこんなに揃えるのは難しいし。


「さすが元会長。お金持ちだねえ」


若干の皮肉を込めて言ってみる。


「会長になんのと金持ちって関係あんの? 普通だよ」

「そしたらうちは貧乏に入るね。そういう会長とかってさ、専業主婦とか金持ちの人がやるイメージある」

「ふうん。まあ、親が会長やってた頃は母さん専業主婦だったからな。今は働いてる」

「へえ」

「ちなみにこの家には今、俺と唯織以外誰もいませんので」

「あっそ」

「あ、構えないんだ」


男って見られてないのかなあと独り言を漏らしながら太一は部屋を出て行った。


いやだってねえ、お互いカレカノ一応いるわけだし。なんか、あるじゃないですか。暗黙の了解というかさ。


浮気相手にしたくないし、されたくもない。


太一は弟みたいな感じなのかもしれない。あたしの弟も中三だからだと思うけど、弟がもう一人増えた感じ。


かっこいいとは思うけど。


あたしはローテーブルの前に座ってベッドの下を覗いてみる。


あ、雑誌発見。


手を伸ばしてベッドの下から取り出してみたら、それはただの週刊誌だった。