急性大好き症候群

「カップルだ。しかも中学生」

「え、まじ?」


すっかり暗闇に染まった前方に二つの人影が見えた。


右に小さい人影、左に大きい人影。


見ようによってはカップルに見えなくもない。


「あの制服、うちの中学よね」

「だね。中学生のガキがカップルで歩いてんの見てると、ぶん殴りたくなるね」

「唯織、笑顔でそんな恐ろしいこと言わないでよ。ほんとにあの二人のこと殴り倒しそう」

「あ、ダメ?」

「ダメに決まってんでしょ。自分がうまくいってないからって人に当たんないでよ」

「当たってないよ。あたしは一般論を言って……え?」


あたしは前方に目を凝らした。人影はあたしたちに向かって歩いていたのだ。


近づくにつれて、その人影が露になっていく。


「あれ、イケメーン!!」


イケメン好きの美紗が声を上げる。あたしは目を凝らしたまま逸らすことができずにいた。