急性大好き症候群

クタクタになるまで練習をしたら、いつの間にかすっかり日は暮れていた。


いつまでもウジウジ悩むなんてかっこ悪い。


だから忘れるくらい練習する。


「じゃね、唯織、美紗」

「じゃあね~」

「また明日」


あたしと美紗はほとんど毎日一緒に帰る。


あたしは家まで徒歩十五分、美紗は徒歩五分。


美紗は小学校からの戦友だ。


「疲れたわ~」

「大会近いからみんな力入ってるよね」

「美紗もえらい気合い入ってるじゃん。大会近くなると新しいブロック編み出すもんね」

「唯織こそバックアタックの練習しまくるじゃない。気合い入ってないわけ?」

「あたしはコートの中にいるときに気合い出し尽くすから」

「そうよね。唯織ってコートから出た途端静かになるもんね。テニ○リのタカさんタイプよね」


美紗が声を殺してくっくっく、と笑いを漏らす。


「あそこまでギャップ激しくないけどね。美紗は……誰だろう」

「いなくていいわよ」


美紗が、あ、と声を上げた。