「あ、起きた?」


太一が部屋に入ってきた。当然だけど、服を着ていた。


「……珍しいね」

「何が?」

「あたしより早く起きるなんて」

「唯織、だいぶ寝てたね」

「嘘」

「今、麻尋と会ってきた」


あたしの中で苛立ちが募る。


「一時間くらい?」

「そうだね」


ベッドから下りて制服を手に持つ。


抱いた浮気相手を置いて彼女と会うとか……。


いくらあたしでも嫌悪感を抱いてしまう。


最低な男じゃんかと思ってしまう。


まあ……わかっていたことだけど。


あ、でもあたしは太一の彼女じゃないから、別に最低でもないのか。


「チョコもらったんだ」

「うん」


嬉しそうにはにかむ目の前の男を初めて殺めてやりたいと思った。


「あ、唯織もありがとう」

「あたしのは違うでしょ。あったからあげただけ」


ついでかよ。


苛立ちが募って、そっけない返事をしてしまう。


麻尋ちゃんと別れて欲しくないと願ったのは自分なのに。


「さっきのあれさ、どういうこと?」

「あれ?」

「……わかんないならいい」

「唯織、怒ってる?」

「怒ってない」


いらいらする。


制服を着て立ち上がる。


情けない。