急性大好き症候群

「俺の親友が彼女を抱いてる姿なんて……見たくなかった…………」


太一が目元を手で覆う。


「あのあと……問い詰めたよ、弘樹に。殺してやりたくなった。でも……弘樹に言われた。『麻尋を泣かせてるのは誰だよ』って……。『俺に縋り付くほど麻尋を追い詰めたのはどこのどいつだ』……って」

「だからって……」


あたしはそれ以上何も言えなかった。


太一の気持ちが痛かった。でも、弘樹の言い分も、悲しいけれどわかった。


ここで悪いのは明らかに弘樹だ。どんな理由であれ、彼氏がいる女の子を抱いていいはずがない。


でも、太一は苦しんでいる。


太一も、弘樹の言ったことは理解しているから。


「俺のせいだ……。麻尋を苦しめたのも、弘樹を敵に回すようなことをしたのも、唯織を抱くことになったのも、全部…………」


太一が覆う手から一筋涙が流れた。


……弘樹は、一体どんな思いで麻尋ちゃんを抱いたのだろう。


身内だから、弟に肩入れしてしまっているのかもしれない。弘樹の味方に着いてしまっているのかもしれない。


親友の彼女であり、片思い相手である麻尋ちゃんを抱いたとき、どんな思いだったんだろう。


少なくとも、嬉しいとかそんな感情は抱いていなかっただろう。


親友を裏切って、自分は浮気相手となって………。


思えば、あたしだって太一の浮気相手となりうる。


あたし達姉弟、どんな役回りだ。