「ほんと、とことんばかだよねえ、唯織も」


教室で呆れる美紗はもう見慣れた。


太一とのことは全部話した。というより、あの時太一に呼び止められたのを美紗に目撃されて、次の日白状させられた。


受験生だからあまり気を遣って欲しくないのに。


あたしがそう言って話すのを渋っていたら、「こういうのは隠されている方が勉強に集中できないもんよ」と一喝され、話せざるを得なくなった。


「裕也から解放されたと思ったら……今度は太一くん? どんだけ犯されれば気が済むのよ」

「犯すって……そんなんじゃないよ。太一は、無理やりやってるわけじゃないから……。むしろあたしが誘ってるようなとこあるし」


太一は口や態度は意地悪そうだけど、決して無理強いはしてこない。あたしが裕也に何をされたかを知っている数少ない人物だし、太一は優しいのだ。


「唯織から誘うの? 唯織、溜まってんの?」

「あたしを変態みたいに言わないでよ……」

「言ったよね、はっきり。誘うって」

「それは自分からキスしたりするってことで……」

「うわ、唯織ってばやらしー。ほんと、一途になったよねー」


けなしと褒め言葉を同時に使われた気がする。