急性大好き症候群

あたしの上で端正な太一の顔が歪められていた。


その瞳から再び涙が溢れて、あたしの頬に落ちてくる。


「わかってるような口をきいてんじゃねえよ」


搾り出すような低い声が太一の唇から零れる。


「麻尋は、ずっと痛みに耐えながら俺に抱かれてきたんだ。俺に気付かれまいと迫真の演技までして。不感症だって俺に言った後、もう一度やってみるって言うから、麻尋を抱いた。あいつ、泣いてるんだよ。

痛くて痛くて、俺に抱かれてる間ずっと泣いてた。俺は自分のことでいっぱいいっぱいで、それまで麻尋がどんな顔して俺に抱かれてるかなんて気にも止めてなかった。俺が気持ち良かったら麻尋も気持ちいいんだって、そんな程度にしか考えてなかった。

あんな麻尋、もう見たくない。苦しそうに顔を歪める麻尋なんて抱けるわけない。

それをどこにぶつけろっての? 麻尋が笑ってる顔が見たいだけなのに、俺はこの苦しみをどこにぶつければいいの?

なあ、唯織、俺どうすればいいの? 麻尋を苦しめないためには、どうすれば…………」


最後の方は消えてしまいそうな声で、あたしは黙って太一の顔に左手を伸ばした。


なんて声をかければいいのかわからない。


首に手がかかっているから呼吸がうまくできない。それでも太一はあたしを殺そうとしているわけではないことはわかった。


太一の苦しみは、窒息してしまいそうなほど痛い。


わかったよ。わからないけどわかった。


でも、それでも太一が麻尋ちゃん以外の女を抱くことはおかしいから。


「離して、太一」


冷たい女だと思われても仕方ない。太一のためだ。