「……どう?」


ようやく太一が唇を解放してくれたとき、あたしは酸欠でぶっ倒れる寸前だった。


「なん、で……ここまでっ…………」


口を制服の袖で拭いながら出た言葉は、息が上がってうまく話せない。


あたしが太一を好きなこと、わかってやってるの?


「ごめん……止まらなかった」

「は……?」


太一を見ると、一瞬目が合ったあと逸らされた。


「やばいから、ちょっと見ないで……今」

「……あ?」


太一くん、先輩は君の言っていることがわかりません。


横を向いて口元を押さえる太一が可愛い。


抱き着きたい、なんて妙な衝動に襲われる。


学校だから絶対しないけど。


「俺とのキス、わかった?」


ああ、はい、君はあたしにどんなキスか教えてくれたんでしたね。


「……死ぬかと思った」

「すみません……」

「もう懲り懲り」

「そりゃあ、どうも」

「太一は麻尋ちゃんだけ見てればいいの」

「ん」


悲しいけど、太一はそれでいいのだ。


あたしのことも見てほしい……なんて、ばかなことを願ってはいけない。