それから太一は数学に勉強時間の半分近くを費やした。


おかげで年が明けてすぐにあった受験前最後の模試は最高のS判定が出た。


「すごいじゃん」


応用問題を教えて欲しいという連絡を受けて行った太一の家でそれを知った。


「弘樹は俺より10点高かった」

「でもすごいよ」

「前回は俺の方が20点高かったのに」


太一は心底悔しそうだった。


二人は親友であり、ライバルだ。


「本番じゃないんだから。まだ時間はあるよ。それまで弘樹に追いつけ追い越せだから」


本当に結果が出るまでは負けている方がいいとあたしは勝手に思っている。


例外はあるものの、勝っている時より負けている時の方がどうしても成し遂げようという気持ちは強くなる。


逆転が起こるのはそれが原因だ。


要はその人の気持ち次第。


「でもさ、唯織は弘樹にも受かって欲しいでしょ?」

「そりゃあ姉ですから」


そんな会話を交わしたのが高校入試一ヶ月前。


そして、太一と弘樹は大岩田高校に合格した。