急性大好き症候群

あたしが裕也の家に行く度に、そんなことが毎回あった。


嫌でも拒むことができなかった。裕也が好きだと思っていたから。


でも、恐怖で硬直した体が裕也のことを受け入れられるはずもない。


ガチガチに固まった体は、何度やっても痛みしかなかった。


体の相性の問題ではない。お互いの気持ちの問題。


そんなあたしが解放されたのは突然で、三ヶ月目に入った週の日曜日、あたしは裕也に家に呼ばれていた。


その日、偶然にも試合があって、あたしは裕也の誘いを断った。


ちゃんと理由は言ったし、ごめんねとも謝った。今となっては、謝る義理などこちらにはなかったけど。


それを裕也はどう解釈したのか、それからあたしははたと裕也に誘われることはなくなった。


そして、裕也の浮気が始まったというわけ
だ。


あたしが悪いのか。それは少し違うと思う。というか、全面的に裕也が悪いと思う。


女に拒否権はない? どんだけ俺様な考えですか。あいにく、あたしはドMではありません。俺様は苦手な部類に入ります。


そして、裕也に解放され悲しみと同時に安堵を覚えたあたしは、自ら記憶をその奥深くに隠滅した。


あたしにとっては消したかったほど痛い記憶であり、一ヶ月ほどの短期間でもこの上ない苦しみを覚えたのだ。


そして、太一に似たようなことをされたあの夜に、隠れていた記憶がひょっこり顔を出して、それから今まであたしに真っ白な世界として見せてきたのだ。


すべて思い出した。


あたしって、弱いのかな。