急性大好き症候群

裕也はそんなあたしを、わかっていたのかもしれない。


この時は目の前の彼氏と話しているだけで、あたしは幸せだった。


笑いあっていた二人に、不意に沈黙が訪れ、三十センチは離れていた裕也との距離が三センチにまで詰め寄っていたことにすぐに気付かなかった。


「裕也……?」


その距離がなくなったのは、あたしが名前を呼んだ直後だった。


家でのキスは初めてで、内心戸惑った。


名前を呼んで開かれた唇を割ってすぐに裕也の舌があたしの咥内に入ってくる。


初めてのことばかりで、どうすればいいのかわからない。


ねっとりとした舌が絡み付いて、あたしはただされるがまま。


「…………!」


そして、服の上から胸に触れてきた、裕也の大きい手。


「やめっ……」


慌てて裕也から離れる。


座ったまま後ずさり、背中に壁が当たる。


「……嫌?」


あたしに詰め寄る裕也は、既に『男』の顔をしていた。


放たれる色気。


「そうじゃなくて…………」


嫌なわけではない……と思う。


ただ、今まで経験したことのない領域にこのまま足を踏み入れることになるのかと思うと。


「初めて、だから……」


少し怖い。