急性大好き症候群

あたしといえば、美紗が裕也と呼ぶことに違和感を抱きつつも、


「……裕也に近づいたのは、美紗から?」


あたしは真実を知りたかった。


美紗はゆっくりと首を横に振った。


「それは違うわ」


そして、あたしはこの言葉を美紗から聞きたかったのだ。


真顔のまま、美紗の形のよい唇だけが動く。


「唯織を応援しながら、裕也を好きだったのは本当よ。……でも、私は唯織の邪魔はしたくなかった」


次の瞬間、美紗の顔が歪み、唇を噛んだ。


「裕也から相談のメールが来たのは本当に突然だった。私と裕也はアドを交換していなかったから誰かから聞いたんだろうけど、まさか相談されるとは思ってなかった」

「相談って、どんな?」

「もちろん、唯織のこと。ちゃんと唯織と話し合ってって私は言ったんだけどね……本当に最低だよ。裕也は」

「でも好きなんでしょ?」


皮肉を込めて言ったつもりだったけど、あまり強くは言えなかった。


そんな男を、あたしも好きになったのだから。


「唯織もわかってると思うけど、裕也って憎めないのよね、悔しいけど。人当たりがいいし、いろんな女が好きになる要素がたくさんある。言い寄って来る女も、裕也が最低だってのはわかってるわよ。でも好きになる。猛毒よね」


悔しいけど、同意せざるをえなかった。


だからあたしは別れたくないと思っていたのだし、好きだった。