「はあ……」


すっかり日が落ちた闇の中で、あたしは何度目かの溜め息を吐いた。


蘇ってくるのは、昼間見たあの光景。


あたしに気付かずに、去って行く男と女。


あたしが悪い。


あの人を責めてはいけない。


あたしにだって悪いところがあるんだから。


責めたって、何も始まらない……。


『……織。唯織、聞いてんの!?』


突然耳に入ってきた声に驚いて、思わず携帯を手から落としそうになった。


やば……今通話中だった。


帰り道を歩いている時に、親友の美紗(ミサ)から電話がきて、それからずっと話してたんだ。


「ごめんごめん、美紗。ぼーっとしてた」

『……まあ、仕方ないわよ』


美紗もあたしの現状を知っている。


二人で電話越しに同時にため息を吐いた。