あー、綺麗
ウィンドウ越しに飾られている石が目に飛び込んだ。

吸い寄せられるように、中に入ると……。

「良かったら、お手にとってご覧になりますか?」
「お願いします」

柔らかな光沢のある布の上にそっと、さっきの石が置かれた。

「これだけ大きいとお高いと思われますよね?」
面倒だ、こういうセールストークは大嫌い。
「おいくらですか?」
「よそのお店だとですね…」
電卓に金額を叩こうとする店員をさえぎって
「だからおいくらですか?」
「お求めいただけるなら、割り引かせていただきますが……」
「あのね、私は購入する意志があるの。
 だから金額をお聞きしてるの……」
少し凍りついた笑顔の店員を横目で見て言った。
「相場は存じています。
 お値段はおいくらですか?」
「ちょっとお待ちください」

そそくさとバックヤードに引っ込む女性店員。

うっとうしいな。
チクリ……。
代わりに出てきたのは、上司らしき男性。
「申し訳ございません。
 お値段は、現金でしたら
 4万円でいかがでしょうか?」
「鑑定証と領収書をこの名前でお願いします」

余計なことは言いたくない、黙って名刺を渡した。

「あ……、いつもありがとうございます。
 ただいま、急いでお持ちします」