「瞳子ちゃんってさぁ、
家きびしいんだってね。」

「きびしい、のかなぁ?」

「門限8時って、ありえなくねぇ?」

「でも、用事のない日は6時には家にいるよ。」

「はぁ?6時に家にいて・・・何してるの?」

「何って・・・・普通に・・・・」


普通に宿題して、部屋でひとり本を読んだり
手紙を書いたり、テレビを見たり・・・・
それより、夜にでかけて、何をするんだろ?


駅前の広場でベンチに座って話す。


「あそこにさぁ、赤いライトで書いてある
店の名前・・・見える?
あのビルとビルの間の、少し奥まったところ。

‘ルイーズ’って店なんだけど、
俺ほとんどあそこにいるから。」


「なに・・・屋・・・さん?」


「何屋さんって・・・
おまえ・・・・・・・」

「昼はいわゆるカフェ?
夜はバー。いつもあそこでマスターの仲間と遊んでて
お金のないときはカウンターの中で
手伝わせてもらってる。」


森川くんはあきれた顔してた。


夜にバーで遊んでる人。


知らない人種の森川くん。
でも、悪い人ではなさそう。


「やべっ、あと30分で8時だよ。
帰るぞ。」


走って電車に飛び乗って二駅先で降りる。
森川くんは私の手を離さない。


家の前で
「土曜日、3時にさっきのベンチで待ってるから」


そう告げて帰って行った。