あの頃、テレフォンボックスで

嫌がる未来を説得して
文化祭の招待状を手に入れた。

「ママ、学校で見かけても、
絶対に声かけないでね。」

そう約束させられて。


そんなこと言われてまで、
行かなくてもいいようなものだけれど、
見たい、会いたい。



数日前にケイタに会ったとき、
それはいつもの二駅先のビルの中の
古い喫茶店だったけれど
「トーコさん、
映画、観に来てよね。」

と彼は言っていた。


「学校でケイタと会うのって・・・
なんだか微妙だなぁ・・・」

「そう?」

片目を少しあげて、笑う。


「何の映画を上映するんだっけ?」

「今度のテーマは・・・
と言っても6月の鑑賞会とは違って
テーマを掲げてないんだけど、
俺的には、コンセプトは‘男が泣ける映画’」

「ふ~ん、
6月には女のコたちの意見が通って
‘ゴースト’かなんかにしたんだったっけ?
未来が言ってたわ。」

「そうだよ、
‘ゴースト’に‘プリティウーマン’。
それからなぜだか
‘ブリジットジョーンズ’だよ?
どういうコンセプトなんだっつ~の・・・・」


「女のコが好きそうなものばっかりね。」

「トーコさんはどんな映画が好きなの?」

「それより、
今度は何を上映することになったの?」

「さぁね、来てからのお楽しみ。」


「ケイタ・・・・

声かけても、いいのかしら?」


「なに、言ってんだか。」



また、笑った。