あの頃、テレフォンボックスで

どうしてほしいのか、わからない。
どうしたいのかも、わからない。

心はいつも
眠ってしまった夫に叫んでいる。


・・・愛して、愛して、私をもっと愛して。


そしてまた、いつものように朝がきて
みんなが出かけてしまったあと
長すぎる一人の時間を
静かに過ごすのだ。

なにかの終わりに向かって・・・・




今は・・・
だけど、今は私のことを気にして
私のことをいつも考えてくれる人がいる。


たとえ会えなくても、
私が彼のことを考えているように、
彼もまた、私のことを考えている。


そう思うだけで、私は満たされる。


空を見上げて
海を想って
ケイタに包まれているような感覚を味わう。


心と体が、それぞれ別のものによって
満たされるものだなんて、
今まで知らなかった。


私の中から湧き上がる
温かい感覚。
生きている実感って、これかしら?

今の私は夫にも優しくできる。
夫の目を見つめて・・・・・


終わりでもなく、始まりでもなく、
大海原の真中にあお向けに寝そべって
ただ、ぽっかり浮かんでいる。



・・・・・ケイタ、愛してる。

体中に溢れてきた想いを少しでも吐き出さなくちゃ、
はじけてしまいそうで、

ひとりで、そう小さく呟く。